初回ご紹介した2020年「40歳以下のトップ20」で「最も活躍する女性」に選ばれた女性経営者Nooshin Behroyan (以下「ベロヤンさん」)が取組んだプログラムおよび教育支援とはどのようなものか、また、女性経営者支援団体との協働や政府対応はどうだったのか、つまり、女性経営者が成功した秘訣について、今回はお伝えしたい。
多様性を活かす「サプライヤーダイバーシティ・プログラム」
アメリカと日本では社会の成り立ちが違う。出身民族・人種の異なる多民族国家アメリカでは、それぞれの違いを前提に多様な人材をどう活かすのか、現実的課題としてダイバーシティ&インクルージョンに向きあわねばならない。多くの異なる視点を持ち込むことで互いに考え方や態度を深化させ、違いを活かす多様な組織や社会づくりへの挑戦が続く。
主役のベロヤンさんは、2016年パクソン社を設立した際、エネルギー業界の一部には従業員をまともに扱っていない現状を目の当たりにし、女性、有色の人、退役軍人などマイノリティに雇用の機会を与え、ビジネスの場を平準化するように働きかけた。
なぜなら、有能でやる気のある女性が多数いるのにもかかわらず、業界では、男性偏重で、女性役員の役割比率は7%未満に過ぎず、意思決定の場は、非常に不均衡だったからだ。
そこで、ベロヤンさんは、母国のペルシャ人はじめ、アジア・中東・アフリカ等異なる民族のエンジニアグループを採用・登用して経営に挑んだ、という。
具体的には、パクソン社では、マイノリティが、トレーニングとスキル活用とにより、生産的なキャリアを手にすることを可能にする「職業訓練プログラム」という戦略的雇用の取組みがある。マイノリティを活かす取組みとしては「サプライヤーダイバーシティ支出プログラム」がよく知られている。実際に、アクセンチュア社が取組んだ「多様性のあるサプライヤー開発プログラム(Diverse Supplier Development Program以下「DSDP」)がある。これは、多様性のある企業(黒人、ヒスパニックはじめ有色人種、女性、障がい者、退役軍人、LGBT等がオーナーの企業)との関係を築き、拡大していくという取り組みだ。
これは12~18カ月にわたる正式なプログラムで、アクセンチュア社のシニア・エグゼクティブが、多様性のある「新興」サプライヤー企業のメンターとなり、その成長を支援するというもの。DSDPはアクセンチュア社と顧客のための戦略的な調達活動であると同時に、多様性のあるサプライヤーを開発することから雇用開発、経済成長を促進するだけでなく、コミュニティを強化するものとなる。さらにアクセンチュア社自身も、顧客、コミュニティから恩恵を受けることになる。DSDPは現在、カナダ、南アフリカ、英国、米国 の4カ国で展開されている(注1)。
パクソン社では、小規模かつ多様な企業をビジネスのターゲットにし、これらの企業のプロジェクトマネージャーと女性、障がい者、退役軍人、LBGTなど一緒に働くワンチームを作り、多様なサプライヤーとの経済的機会の確保に成功している。
女性エンジニアや退役軍人に肯定的変化をもたらし、石油、ガス業界におけるジェンダー平等を推進した。その結果、まだ目標からすれば少ないが、女性スタッフが約25%に到達した。
また、建設に安全に取り組むことほど重要な仕事はない、と判断し、徹底した建設管理、プロジェクト管理、フィールド品質管理、安全サービスとトレーニングに力を入れた。
加えて、パクソン社は、従業員だけに留まらず、事業推進により影響の受ける環境保護、損害の防止などに取組み、安全専門家と訓練を受けた自社の従業員とで地域の災害復旧に尽力している。実際、カルフォルニアの森林火災の荒廃においてフィールドサポートを提供した。実践にあたっては、地域の安全向上に注力するVeriforce社のオンライン安全トレーニングに毎月参加している。
こうした取組みが功を奏し、2019年の売上高が2700万ドル、従業員180人の会社に急成長している。
アメリカと日本では社会の成り立ちが違う。出身民族・人種の異なる多民族国家アメリカでは、それぞれの違いを前提に多様な人材をどう活かすのか、現実的課題としてダイバーシティ&インクルージョンに向きあわねばならない。多くの異なる視点を持ち込むことで互いに考え方や態度を深化させ、違いを活かす多様な組織や社会づくりへの挑戦が続く。
主役のベロヤンさんは、2016年パクソン社を設立した際、エネルギー業界の一部には従業員をまともに扱っていない現状を目の当たりにし、女性、有色の人、退役軍人などマイノリティに雇用の機会を与え、ビジネスの場を平準化するように働きかけた。
なぜなら、有能でやる気のある女性が多数いるのにもかかわらず、業界では、男性偏重で、女性役員の役割比率は7%未満に過ぎず、意思決定の場は、非常に不均衡だったからだ。
そこで、ベロヤンさんは、母国のペルシャ人はじめ、アジア・中東・アフリカ等異なる民族のエンジニアグループを採用・登用して経営に挑んだ、という。
具体的には、パクソン社では、マイノリティが、トレーニングとスキル活用とにより、生産的なキャリアを手にすることを可能にする「職業訓練プログラム」という戦略的雇用の取組みがある。マイノリティを活かす取組みとしては「サプライヤーダイバーシティ支出プログラム」がよく知られている。実際に、アクセンチュア社が取組んだ「多様性のあるサプライヤー開発プログラム(Diverse Supplier Development Program以下「DSDP」)がある。これは、多様性のある企業(黒人、ヒスパニックはじめ有色人種、女性、障がい者、退役軍人、LGBT等がオーナーの企業)との関係を築き、拡大していくという取り組みだ。
これは12~18カ月にわたる正式なプログラムで、アクセンチュア社のシニア・エグゼクティブが、多様性のある「新興」サプライヤー企業のメンターとなり、その成長を支援するというもの。DSDPはアクセンチュア社と顧客のための戦略的な調達活動であると同時に、多様性のあるサプライヤーを開発することから雇用開発、経済成長を促進するだけでなく、コミュニティを強化するものとなる。さらにアクセンチュア社自身も、顧客、コミュニティから恩恵を受けることになる。DSDPは現在、カナダ、南アフリカ、英国、米国 の4カ国で展開されている(注1)。
パクソン社では、小規模かつ多様な企業をビジネスのターゲットにし、これらの企業のプロジェクトマネージャーと女性、障がい者、退役軍人、LBGTなど一緒に働くワンチームを作り、多様なサプライヤーとの経済的機会の確保に成功している。
女性エンジニアや退役軍人に肯定的変化をもたらし、石油、ガス業界におけるジェンダー平等を推進した。その結果、まだ目標からすれば少ないが、女性スタッフが約25%に到達した。
また、建設に安全に取り組むことほど重要な仕事はない、と判断し、徹底した建設管理、プロジェクト管理、フィールド品質管理、安全サービスとトレーニングに力を入れた。
加えて、パクソン社は、従業員だけに留まらず、事業推進により影響の受ける環境保護、損害の防止などに取組み、安全専門家と訓練を受けた自社の従業員とで地域の災害復旧に尽力している。実際、カルフォルニアの森林火災の荒廃においてフィールドサポートを提供した。実践にあたっては、地域の安全向上に注力するVeriforce社のオンライン安全トレーニングに毎月参加している。
こうした取組みが功を奏し、2019年の売上高が2700万ドル、従業員180人の会社に急成長している。
政府のリーダーシップによる女性活躍支援
パクソン社の急成長は、企業の社会的責任を果たそうとするパクソン社の経営戦略によるだけでなく、女性活躍を推進する法的制度が土台の一つにあった、といえる。
ベロヤンさんが追いかけていた市場は、とりわけ政府機関やユーティリティ(公益)との契約を得て、多様な企業との契約を15〜40%に費やしたことだ。
この市場創造は、以下のような法律が下支えにあった。
1963年公民権運動のピークになったワシントンの大行進の翌年の1964年、この運動を背景に成立した公民権法は、雇用差別の禁止を規定した連邦の基本法となった。人種、皮膚の色、宗教、性、出身国に基づく雇用差別を禁止し、当該法の執行を監督する機関として、機会均等雇用委員会(Equal Employment 0pportunity Commission:EEOC)が設置されている。
この基本法の下に、1965年大統領令11246での公共調達先に対する男女平等推進策や政府調達者に雇用機会均等令にかかわるアファーマティブ・アクション・プログラムが打ち出された。
これをベースに、1988年、女性の企業所有法(Women’s Ownership Act of 1988)がある。連邦政府の調達契約における女性企業優遇措置に法的根拠を与えている。女性に対する信用保証機会の充実による融資における男女平等の実現、中小企業庁への女性所有企業局の設置、全国女性企業員会の設置、女性企業センターによる女性を対象にしたプログラムの実施などが定められていた。
1994年連邦調達改革法(Federal Acquisition Streamlining Act)では、女性が所有する中小企業への元請け契約および下請け契約の割合を5%以上にする数値目標を明記し、融資機会を均等にする法律が制定されている。
一方の女性の採用・登用施策の体制整備は、1978年公務員制度改革法(Civil Service
Reform Act)による連邦政府における女性の採用・登用施策が、ヒスパニックはじめマイノリティを対象にした施策の一環として取り組まれ、:EEOC(機会均等雇用委員会)の担当官が中心にマイノリティ雇用計画を策定・実施するところとなった。
さらに、1978年に始まる民間企業と共に連邦政府でも、短時間勤務を可能にする短時間雇用法、休暇を職員相互で融通する法律、テレワーク推進法など連邦職員の限りであるが、両立支援促進を徹底する先導的取組みがなされている。
そして、2011年から大統領令に基づき、女性を含むマイノリティ、退役軍人、障がい者について雇用機会を保障する計画を集約した「多様性・包含戦略計画」が省庁ごとに策定され、2014年には連邦政府および労働省に女性の起業・幹部ポスト昇進増加など男女平等政策を含めた労働政策目標を設定している。
アメリカの女性活躍の背後には、女性活躍推進に実効性のある法的根拠を規定づけた政府のリーダーシップが重要な役割を果たしていることがわかる(注2)。
パクソン社の急成長は、企業の社会的責任を果たそうとするパクソン社の経営戦略によるだけでなく、女性活躍を推進する法的制度が土台の一つにあった、といえる。
ベロヤンさんが追いかけていた市場は、とりわけ政府機関やユーティリティ(公益)との契約を得て、多様な企業との契約を15〜40%に費やしたことだ。
この市場創造は、以下のような法律が下支えにあった。
1963年公民権運動のピークになったワシントンの大行進の翌年の1964年、この運動を背景に成立した公民権法は、雇用差別の禁止を規定した連邦の基本法となった。人種、皮膚の色、宗教、性、出身国に基づく雇用差別を禁止し、当該法の執行を監督する機関として、機会均等雇用委員会(Equal Employment 0pportunity Commission:EEOC)が設置されている。
この基本法の下に、1965年大統領令11246での公共調達先に対する男女平等推進策や政府調達者に雇用機会均等令にかかわるアファーマティブ・アクション・プログラムが打ち出された。
これをベースに、1988年、女性の企業所有法(Women’s Ownership Act of 1988)がある。連邦政府の調達契約における女性企業優遇措置に法的根拠を与えている。女性に対する信用保証機会の充実による融資における男女平等の実現、中小企業庁への女性所有企業局の設置、全国女性企業員会の設置、女性企業センターによる女性を対象にしたプログラムの実施などが定められていた。
1994年連邦調達改革法(Federal Acquisition Streamlining Act)では、女性が所有する中小企業への元請け契約および下請け契約の割合を5%以上にする数値目標を明記し、融資機会を均等にする法律が制定されている。
一方の女性の採用・登用施策の体制整備は、1978年公務員制度改革法(Civil Service
Reform Act)による連邦政府における女性の採用・登用施策が、ヒスパニックはじめマイノリティを対象にした施策の一環として取り組まれ、:EEOC(機会均等雇用委員会)の担当官が中心にマイノリティ雇用計画を策定・実施するところとなった。
さらに、1978年に始まる民間企業と共に連邦政府でも、短時間勤務を可能にする短時間雇用法、休暇を職員相互で融通する法律、テレワーク推進法など連邦職員の限りであるが、両立支援促進を徹底する先導的取組みがなされている。
そして、2011年から大統領令に基づき、女性を含むマイノリティ、退役軍人、障がい者について雇用機会を保障する計画を集約した「多様性・包含戦略計画」が省庁ごとに策定され、2014年には連邦政府および労働省に女性の起業・幹部ポスト昇進増加など男女平等政策を含めた労働政策目標を設定している。
アメリカの女性活躍の背後には、女性活躍推進に実効性のある法的根拠を規定づけた政府のリーダーシップが重要な役割を果たしていることがわかる(注2)。
(注1) Accenture webサイト「ダイバーシティが生み出す価値 ―サプライヤー向けダイバーシティ&サスティナビリティ」
(注2)大沢真知子(2014)「アメリカのアファーマティブ・アクション」『生活経済政策』
(注2)大沢真知子(2014)「アメリカのアファーマティブ・アクション」『生活経済政策』
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山極 清子
株式会社wiwiw代表取締役会長・昭和女子大学客員教授・経営管理学博士(立教大学)
1995年財団法人21世紀職業財団両立支援部事業課課長に出向後、資生堂の女性活躍の礎を築く資生堂初の女性人事課長に就任。2009年3月まで資生堂男女共同参画リーダーとして資生堂女性管理職登用のアクションプランなど実施。また、これらの仕事と並行して大学・大学院を修了。
2010年、wiwiw社長執行役員、2018年代表取締役社長、2019年現職に至るまで、25年余り一貫して女性活躍とダイバーシティ、仕事と育児・介護との両立の三位一体で働き方改革に取り組んできている。
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