介護アドバイザーの角田です。
高齢者の新型コロナウィルスワクチン接種が始まりました。
ワクチン接種を受けるには本人の同意が必要で、予診票にある、同意欄のチェックと署名が必要となります。
このワクチン接種について、厚生労働省は「対象者には原則として接種を受ける努力義務の規定が適用される」としていますが、
「予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています。受ける方の同意なく、接種が行われることはありません」と、
強制ではなくあくまでも個人の判断で受けるように、また、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることがないように促しています。
ところで、予防接種には本人の同意が必要なのに、自己判断や意思表示のできない赤ちゃんが予防接種を受けられるのはなぜでしょう。
実は、予防接種は「予防接種法」という特別な法律に基づいて行われます。
- 予防接種法 第2条7項
「この法律において『保護者』とは、親権を行う者又は後見人をいう。」
- 予防接種実施規則 第5条の2
「予防接種を行うに当たっては、あらかじめ被接種者又はその保護者に対して、予防接種の有効性並びに副反応について当該者の理解を得るよう、適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない。」
つまり、親権をもつ父親か母親が文書による同意をすれば自分の子供に予防接種を受けさせることができるのです。
では、認知症になって、コロナワクチンの有効性・安全性、接種後の通常起こりうる副反応及び
まれに生じる重い副反応並びに予防接種健康被害救済制度について説明を受けても理解できず、
意思表示ができない高齢者の場合はどうなるでしょう。
厚労省は、高齢者施設に対して
「施設が家族や施設嘱託医の協力を得て本人の意思を確認し、自筆か意思確認した人の代筆で予診票の同意欄に署名してもらう」としたうえで、
「認知症の人には分かりやすい言葉や絵、写真などを使って可能な限り本人の意思を確認して、意思確認ができない場合も成年後見人が いれば家族や主治医、入所施設の職員らと相談して接種できる」
と通知しました。
予防接種では親権を行う者又は後見人のみが保護者として同意権を認められており、
それ以外の子供や孫や親族、ましては介護サービス提供者が本人に代わって同意することは原則認められていないのです。
現在、特別養護老人ホームでは入所者の8~9割が認知症といわれていて、成年後見制度を利用していない人はたくさんいます。
認知症の人を抱える家族からは「国は、家族や親族の同意も認めてほしい」、
施設からは「現場の実情に合った運用を認めてほしい」という声が上がっています。
これらの要望に応えるには法改正が必要です。
田村憲久厚生労働相は4月23日の衆院厚労委員会で、認知症の人へのワクチン接種について
「どのような形で本人の意思確認をすればいいのかを丁寧に示したい」と述べ、
確認方法を明確にして近く自治体に通知を出すとのことです。
(残念ながらこのブログを書いた時点では通知は出されていません)
各自治体では、高齢者施設の入所者を優先する、年齢で区切って高齢の人たちから行うなど、地域にあった方法で接種を開始しました。
施設に入所している場合、施設は入所者(または家族等)に対して、
ワクチン接種に関する必要な事項(接種券、予診 票の記入等)について説明する義務があるので、家族としては安心です。
問題は、在宅で一人あるいは老夫婦で暮らしている認知症の親御さんです。
ワクチン接種のクーポンが入った「新型コロナワクチン接種のお知らせ」という郵便物が自宅に届いているか聞いてみましょう。
全国一律ではないのですでに届いている地域とこれからの地域があるようです。
接種の予約を電話やWebで受け付ける市区町村が多く、役所のホームページで公開していますので、親御さんのために調べてあげるといいですね。
デメリットよりもメリットが大きいと報道されていますが、ワクチンを受けることができない人や受けるにあたり注意が必要な人もいます。
心配ならかかりつけ医に相談するといいでしょう。
認知症の親御さんがいろいろな情報から取り残されることがないように、気を配ってあげてください。
そして、コロナワクチンについて、親子で話し合ってみるといいですね。
つのちゃん
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