介護アドバイザーの角田です。
要介護度が重くなって介護が大変になった、あるいは認知症で一人にするのは心配だと、親御さんに高齢者施設に入ってもらった子供は大勢います。
親御さんの方から、子供には面倒をかけたくないから施設に入ったという人もいます。
一方、相談でよく聞くのは「親に施設を勧めたら『私は入らない』と、子供の言うことを聞いてくれない」というものです。
「子供が親の言うことを聞かない」から「親が子供の言うことを聞かない」に逆転するのは切ないですね。
筆者は3月から厚生労働省の「成年後見制度利用促進専門家会議」をZoomで傍聴しています。
霞が関まで出かけなくても全国の専門家の発表や意見交換を傍聴できる便利な世の中になりました。
そこで話し合われたことで一番印象に残ったのが「意思決定支援」です。
認知症の高齢者等を後見するときの基本的な関わり方を学ぶことができました。
これは、子供が親を支える際にも大切な姿勢だと思います。
配布された資料を参考に紹介します。
①「本人には決める力があるという前提で関わる」
どのような人であっても、本人には意思があり、決める力があるという前提に立って意思決定支援をする
②「あらゆる支援をし尽くして」
本人が自ら意思決定できるように、実行可能なあらゆる支援を尽くさなければ、代わりに決めることはできない
③「不合理にみえる決定も尊重されるべき」
一見不合理にみえる決定でも、それだけで本人に意思決定能力がないと判断してはいけない
④「〇〇だから、この人ならば、〇〇を選ぶはず」
どうしても本人の意思決定や意思確認が困難な場合には、
明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意思)に基づき行動することを基本とする
⑤「この人にとっての、一番よいことは」
本人の意思が推定できない場合や、表明されている意思が本人にとって見過ごすことができない重大な影響を生じるものである場合には、
本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての最善の利益に基づく方針を採らねばならない
⑥「どうしても必要なときは、最も制限が少ない方法で」
本人を護るためにこれ以上先延ばしにできない場合で、さらに他に手段がない場合には、
本人にとって最も制限が少ない手段を検討する
⑦「本人には決める力があるという前提に戻る」
一度代わりに決めた場合であっても、次の意思決定場面では、第一原則に戻り、
意思決定能力の推定から始めなければならない
出典:厚生労働省「成年後見制度利用促進専門家会議令和3年6月2日配布資料2」
基本的人権とは「人間らしい生活(当たり前の生活)を送る権利」であり、自分の意思で選択し決定できる権利も含まれています。
どこで暮らすかの選択は人生を決める重大な決定です。
親に施設に入ってもらいたい場合、②の「あらゆる支援をし尽くして」に則って、
施設入所のメリットとデメリットを親子で検討し、見学に行き、ケアチームの専門家の意見も聞いて、本人に決定してもらうことになるでしょう。
その際、子供は自分の思いを真剣に伝えることが大事だと思います。
石原裕次郎は病院に入院するのは絶対に嫌だと拒んでいました。
傷みが激しくなって衰弱していく裕次郎に、病院で治療を受けさせたい妻の北原三枝は
「裕さんがこんな風に目の前で痛がっていたら寝られないじゃない。私はずっと寝ていないのよ。私は限界よ」とあえて言いました。
すると、
「そうかわかったよ。明日病院に行く。お前のために行くんだからな」
と、最後の入院を決断したというエピソードがあります。
自分のためではなく相手のために決断するということも人生にはあるのだと思いました。
「親に24時間安心・安全な暮らしをしてもらいたい」という理由とともに、
「親が心配で働くことができない。介護で疲れ切ってもうこれ以上頑張れない。とても困っている」
という実情を伝えることも、親子だからできることだと思います。
それを聞いて、親御さんがどう決断するか。
意思決定支援の流れに沿って進めてみてください。
つのちゃん
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