富士電機株式会社様は、2006年度に「女性活躍推進室」を発足以来、女性活躍推進を進めてこられました。2016年度からは、ダイバーシティ推進の専任組織の配下に、各本部責任者及び各事業所担当からなる「ダイバーシティ推進委員会」を置き、活動に一層力を入れていらっしゃいます。
女性の管理職昇格後のネクストステップに向けた施策として、wiwiwでは2021年度より継続して「女性管理職研修」をご提供しています。導入背景と効果について伺いました。
多様な人財がチームで総合力を発揮できる会社を目指す
wiwiw 貴社の経営戦略におけるダイバーシティ推進の位置づけ、現状と方針・目標、これまでの施策や活動の内容について教えてください。
広瀬様 当社は経営モットーである従業員ファーストの考え方のもと、トップコミットメントとして“多様な人財の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮します”と経営方針に掲げ、ダイバーシティ(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、DE&I)を経営戦略の一つと位置づけています。
当社では各年代において女性の割合が少なく、かつ男性同様に高年齢化が進んでいます。また女性の役職者※1(係長・主任クラス以上)も少ないという背景から、特に女性活躍推進に注力しています。2006年度に女性活躍推進の専門部隊を発足して以来、制度や支援の仕組みを整備してきました。男女問わず多様な人財が仕事と家庭を両立し、経営の意思決定に参画している、こうした姿を目指していきたいと考えています。
wiwiw 専門部隊の発足以来、「採用支援」「キャリア支援」「働きやすい職場環境整備」の3つの支援を軸とし、女性活躍の推進に取り組んでいらっしゃいます。キャリア支援についてお聞かせください。
福岡様 年代やキャリアに応じて、次のような支援を行っています。
●シスター制度(2011年度~)
主に初任女性社員を対象とし、ロールモデルの共有やキャリアと私生活の両立における課題を解決するため、部門を横断した女性先輩社員をアドバイザーとしたメンター制度(シスター制度)を導入しています。女性社員のキャリアアップに向けたモチベーションを高め、上位職への挑戦意欲を有する女性社員を増やすことをねらいとしています。
●重点キャリア開発(2017年度~)
3ヵ年以内に上位職へ挑戦したい、という意志を有する女性社員を対象とした施策です。所属長と面談のうえ、重点的にキャリアを開発する対象者として登録を行い、個別の育成計画に基づきながら、OJTを通じた育成とOFF-JTトレーニング(集合研修)への参画によりキャリアアップにつなげる支援を行い、女性管理職を増やすことをねらいとしています。
上記施策も含め、採用・キャリアアップ・環境整備の3本柱で取り組みを推進しており、若手の段階からキャリアアップの機会を継続的に与えることで、女性管理職数も拡大してきました。
管理職昇格後、さらなるステップに挑戦するマインドを育成するために~
wiwiw 2021年度から女性管理職を対象とした研修を提供させていただいています。導入前の課題についてお聞かせください。
広瀬様 女性管理職の中でも個人によってネクストステップへの意欲やレベルに差があり、「専門性に閉じこもってしまう」という偏りも一部見受けられました。社内で女性管理職はまだまだマイノリティな存在とも言え、職場で孤独な立場にあることも原因の一つだと考えました。
また当時、女性が管理職へ昇格した後の教育の機会が足りていないという状況は認識していました。対象者へのヒアリングから、横のつながりや、気持ちを高めていくことが必要だとわかりました。
こうして、女性管理職全員に焦点を当てた研修を実施し、社内ネットワークを構築するとともに、社内外のロールモデルから大局観を身につける機会をつくるといった案が出てきました。
wiwiw 当社の女性管理職研修をご導入いただいた理由を教えてください。
福岡様 2009年度から育児休職期間中の従業員の不安解消を目的として、wiwiwのキャリアと育児の両立支援プログラムを導入していることもあり、ダイバーシティ推進、特に女性活躍推進事業において歴史・実績があることを存じておりました。そのような経緯もあり、貴社へ新たな施策の立ち上げについて当社の課題をご相談しました。
管理職昇格後のネクストステップ実現に向けた道を切り開いていく可能性や動機づけ、視野の広がり、視座が高まるような明確なサービスをご提案いただいたことが導入の理由です。
wiwiw 本研修の実施にあたり工夫されたことを教えてください。
広瀬様 本研修は、多様な人財によるイノベーション創出を通した会社の発展に向け、その第一歩として位置づけました。女性社員が経営参画できる素養を身につけるための環境整備を行うことを目的とし、以下のアウトプットを期待していました。
①管理職昇格後のさらなる能力開発(視座を高め、視野を拡げる)
②女性ライン職※2(部課長)の輩出(=ロールモデル構築)
これらの成果を出すためには、女性管理職のマインドの変化を起こすことと、定期的な動機づけが重要と捉えました。また、課長・部長へとステップを登っていくにあたって必要な視点とは何だろうと考えながら企画を練りました。
こうした目標を達成するために、以下のような工夫をしています。
- 本研修をチベーション維持のきっかけとすべく、毎年定期的に開催する
- 実効性を高めるために、研修の中でアクションプランを作成し、一定期間後にフォローアップを行う
- 参加者は女性活躍推進の被支援者側であるとともに、当社の女性活躍推進の牽引役であるという自覚を根付かせるための動機付けを行う
- 積極的な研修参加、研修効果の向上に向けて、研修企画段階から参加者を巻き込む
wiwiw 本研修を通じて良かった点や、ご満足いただけた点があれば教えてください。
福岡様 本研修の実施も今年で4年目となりました。研修は、座学による知識付与とセルフワークやグループワーク、他社の女性ロールモデル(主に技術系職種出身の役員)2名とのパネルディスカッションで構成されており、ゴールが明確で毎回バラエティに富んだ内容だと感じています。ご紹介いただいたロールモデルも素晴らしく、2023年度は参加者の97%が大変有意義だった・有意義だったと回答し、満足感も高いです。
実施後は、アンケートをふまえて、wiwiwさんも含めて次年度に向けた総括をしています。今年はこういう内容を実施したいとお伝えすると、適切な提案をしていただける点もありがたいです。
<実施した研修のトピック>
2021年度: 未来洞察、キャリアデザイン
2022年度: 自己分析、エンゲージメントの高め方、未来洞察
2023年度: 可視化、フレームワーク
本研修を通じて、スキルアップだけでなく、社内での人脈ができるということも大きな成果の一つです。管理職として実践すべき事項の認識を改め、モチベーションや自信創出につながっている様子もうかがえます。
参加した女性からは「男女問わず参加する研修があっても良い」といった声や、上司や男性社員からは「自分自身も受けたい」という声が挙がるなど、さまざまな反響がありました。また、この様な機会をきっかけに、女性管理職への取り組みや活躍を社内外に発信することで、後進の背中を押すと言った相乗効果も期待できます。今後もwiwiwさん始め、他社のDE&I担当者の方々とも連携させていただきながら、女性管理職の輩出とさらなる活躍、働きやすい会社・社会につなげていきたいと考えています。
これからの女性活躍推進について
wiwiw これからの女性活躍推進についてお聞かせください。
広瀬様 将来予測が容易ではなく、新たな価値観へのシフトが進む環境にあって、富士電機が持続的成長企業であり続けるためには、多様な人財がチームで総合力を発揮し、変化へ適応しながら新たな価値を創造していく必要があります。富士電機では、2024年からスタートした中期経営計画をふまえた人財戦略において、「ウェルビーイングと会社の持続的成長の好循環の実現」をビジョンとして掲げ、人財マネジメントの抜本改革に取り組んでいきます。
女性活躍推進の面では、これまでの取り組みにより、女性社員の母数や女性役職者数は拡大してきており、まだまだ道半ばではあるものの、女性役員輩出を視野に入れた施策を展開できる土壌が出来つつあると考えております。今後は将来の女性役員輩出に向けた第一歩として、女性ライン職の輩出につながる施策を計画しております。
女性が在籍する職場でアンケートを実施したところ、上司と女性部下の間で、ライン職登用や、キャリアに関するコミュニケーションにおける意識のギャップがあることがわかりました。そのため、女性部下とのコミュニケーションに関する上司向けの教育や、経営人財育成に向けた選抜研修への女性社員の積極登用、選抜された女性社員に対するメンター制度などを実行していく考えです。
wiwiw 貴重なお話をありがとうございました。
※2 ライン職:管理職のうち、役職が課長・部長またはそれ以上の指揮命令系統に属する従業員
また、研修実施にあたっては、これまで6社の女性役員・管理職の方々にパネリストとしてご登壇いただきました。みなさん、大変ご多忙な中、女性のキャリア形成支援に役立ちたいと、とても前向きにご協力いただき、研修当日は、本音で熱くさまざまなことを語っていただいています。受講者のみなさんも、前のめりで質問され、ロールモデルの影響力を強く感じます。ご協力いただいた女性役員・管理職の皆様にも、この場をお借りして、心より感謝申し上げます。